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クローズド環境での特許侵害について

他社が自社の特許を工場内部などのクローズド環境で利用している場合、訴える事が出来るのでしょうか?
田中俊哉 さん
2023-09-25 19:22

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湯澤 亮 弁理士
クローズド環境のみでの特許発明の実施とのことで、方法特許の前提で以下回答します(製品特許は市場に出回るので、原則的にクローズド環境のものではないためです)。 結論から申しますと、訴えることは理論上可能ですが、実際には難しいです。 方法特許は、市場に出回る製品特許と異なり、基本的に工場内のクローズド環境で実施されるという実情があります。 そもそもクローズド環境で方法特許が実施されていると推定する前提として、①その方法特許でしか製造できない製品が市場に出回るか、②クローズド環境にいた従業員又はその情報が流出するか、③営業部隊の情報交換で認知するか、などの間接的な情報から推定するものと考えられます。 してみると、この推定情報を入手すること自体が困難であり、また、入手したとしてもあくまで推定情報であって確定情報では無いことから、相手方が特許権を侵害していない可能性も十分にあるわけです。 また、訴えを提起した後も「その方法特許は使用してないですよ」と相手から言い逃れされ、その証拠(別の方法を使用しているなど)を相手方が提出してくる可能性なども考えられます。 なお、2020年の特許法改正により「査証制度」(日本版ディスカバリー。工場立ち入りの制度)が創設されましたが、これも訴えを提起した後に所定の条件で申し立てる制度であってハードルは高めです。 以上のように、方法特許に関する未確定の推定情報に基づく訴えは、その不透明さと、失敗したときの風評リスク(自分も相手方も)等があるために、実務上はほとんど行われておりません。 日本の商慣習では、訴える、訴えられるというのは、それだけで双方それなりのダメージを被るものですから、確定情報があったうえでも風評等リスクを加味しているのが各社実情です。 余談ですが、このような状況でも方法特許を取得することには意味があります。 理由は、これも日本の商慣習によるのですが大企業ほどコンプライアンス(企業倫理)を守り、また、大企業ほど特許情報を常時精査している(認知している)という前提があり、外部に漏洩し難い方法・製法であっても、それが他社特許に関するものであれば実施しないという実情があることによります。
2023-09-26 00:34
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