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Amazonのワンクリック特許とは?Amazonから特許戦略を学ぶ
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ビジネスモデル特許を知るうえで最も有名な例がAmazonの「1-Click注文」のシステムでしょう。聞いたことがある人、利用したことがある人もいるでしょう。今回はこの特許を基にビジネスモデル特許への理解を深めていきましょう。

Amazon ワンクリック注文とは何か

1クリック特許は、Amazonが開発した画期的なシステムで、オンラインショッピングの手続きを非常に簡単にする技術です。この特許は、商品を購入する際に、ユーザーが住所や支払い情報を事前に登録しておけば、画面上のボタンを1回クリックするだけで、注文が完了するというものです。

ワンクリック特許の内容

この仕組みを示した特許(特許4959817号)は「Amazon.com,Inc.」から1998年9月14日に出願されています。つまり出願後から20年以上経過した本特許は既に特許法では守られておらず誰でも利用できるようになっています。日本以外でも多くの国で特許が認められていますが、今回は日本で登録された特許について解説します。

ワンクリックで商品を注文できるシステム

1.商品を選ぶと、その商品情報と注文ボタンが画面に表示されます。

2.この注文ボタンを1回クリックするだけで、注文が完了します。追加の確認操作は不要です。

3.ボタンをクリックすると、注文情報とユーザーの識別情報がサーバに送信されます。

4.サーバーは、今回の注文情報と、同じユーザーからの以前の注文情報を1つにまとめて処理します。

この仕組みを使うことで、ワンクリックで簡単に商品を注文することができます。

「ワンクリックで決済ができる」だけでは、この特許を実施していることにはなりません。ワンクリック決済に加え、複数の注文を1つにまとめる処理を行って初めて、この特許を実施していることになります。

Amazonは当初、「ワンクリックで決済ができる」点のみを特許にしようとしましたが、それだけでは特許が認められませんでした。そこで、「ワンクリックで決済ができる」ことと、「複数の注文要求を1つの注文に結合する」ことを特徴とする請求項にした結果、特許が認められました。

ほとんどのソフトウェア特許の問題と同様に、Amazon はかなり広範な概念を保護することができました。この特許は、特定の発明ではなく「ビジネス方法」を保護している特許なのです。

1-Click特許がもたらした効果

顧客の購買促進

あるレポートによると、ワンクリック方式の導入により売上が 28% も増加したことが言われています。現在でも、消費者のなんと 97% が、利便性の欠如を理由に、ある時点でカートを放棄したことがあると報告されています。実際、買い物客の 18% は、購入プロセスが複雑すぎるという理由で購入を辞めていたそうです。

Amazonのブランド価値向上

1-クリック特許は、Amazonのブランドを形成する上で非常に重要な役割を果たしました。この特許は、特許の独占権が商標価値も同様に高めてきたことを示しています。

Amazonのブランドには、使いやすさとスピードが含まれますが、1-クリック機能はその中でも特に顧客にアピールする重要な部分でした。

現在でもAmazonは「1-Click」の商標を保有しており、競合他社はこのフレーズを自社のワンクリック機能の説明に使用することはできません(ただし、一般名詞化のリスクもあります)。2017年に特許が失効した時点でも、Amazonのアプリ利用者の半数が1-クリック機能を定期的に利用していました。20年間の独占期間がなければ、Amazonがこの用語に対するブランド価値をここまで高めたり、その技術をAmazonと強く関連付けたりすることはできなかったでしょう。

あのAppleにもライセンスしていた!

iTunesで衝動的に曲を購入したり、新しいiPhoneアプリをダウンロードしたことがある人は多いでしょう。実は、AppleはAmazonに非公開の特許使用料を支払い、2000年にAmazonの「1-Click特許」のライセンスを取得しました。この技術をiTunes、Apple App Storeで使用しています。AppleのApp StoreもAmazonと同じように、購入がスムーズです。AppleがAmazonの特許を利用したのは、「即時購入が注文を促進する」という魅力があったからです。

もしアプリをまずショッピングカートに追加してから購入する手順だったら、売上は今ほど伸びていなかったでしょう。そう考えると、Amazonがこの特許を取ったのもうなずけます。

全ての国で特許が認められたわけではない

「1-Click注文」がAmazonの成長に大きく貢献したことは間違いありませんが、この特許がどの国でも認められているわけではありません。ヨーロッパ特許庁は、この機能を「当たり前すぎる」と判断し、特許として認めませんでした。カナダも最初は特許を認めていませんでしたが、Amazonが訴訟を起こして勝訴し、2011年に特許が認められました。この訴訟の結果、カナダでは特許出願のガイドラインが改定されることになりました。また、オーストラリアもいくつかの理由を挙げて、この特許の申請を却下しています。

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