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特許における「差止」とは?特許を侵害されている場合の対応方法について解説
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特許における「差止め」とは、特許権を持つ人が他の誰かがその特許を無断で使っている場合、その活動を止めさせるために行う法的な手続きです。

差止を行うための差止請求権は、特許発明を保護するために特許法で認められている重要な権利です。これにより、特許権者は、許可なく自分の特許を使っている者に対して、その行為を止めるよう要求することができます。この権利は、特許発明を奨励し、産業の発展に貢献するという特許法の目的を支えるために不可欠です。差止請求は、被害が発生しているかどうかに関わらず、ただ侵害行為が行われていれば行使できるため、非常に強力な手段です。

この差し止めによって、他の人が特許を持っている製品を勝手に作ったり売ったりしている場合、これを止めることができます。ここでは損害賠償請求も同時に行われることがほとんどです。

さらに、差止請求を行うときには、侵害品の廃棄や、侵害に使われた設備の撤去を求めることも(実際に認められるかは別として)可能です。これにより、違法な製品の製造や販売を根本から防ぐことができます。

特許による差止請求の要件とは

差止請求が行われる要件について、特許法第100条第1項では以下のように定められています。

第百条特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

「侵害する」とは、今現在も続いている特許の不正利用を指します。たとえば、あなたの特許された技術が他の人によって使われている場合、それが侵害行為です。

一方、「侵害するおそれがある」とは、将来的に特許侵害が起こる可能性がある状況を指します。例えば、誰かが特許を侵害していないと主張していても、侵害した商品の在庫をまだ持っている場合など、今後また侵害が起こるかもしれないと判断されるとき、この状況が当てはまります。

つまり特許権侵害が認められるかが差止請求を行う上で重要なポイントとなります。

差止請求の流れ

特許権侵害に対処するための法的手続きは、以下のような具体的なステップで進められます。これを理解することは、企業や個人が自らの権利を守るために重要です。

1.書面による請求

最初のステップとして、侵害している相手方に対して文書で違法行為を停止するよう正式に請求します。これは法的に必須の手続きではありませんが、根拠の主張としての役割も果たすため、書面での請求が一般的です。ただし、状況に応じて口頭での請求も可能です。

2.訴えの提起

書面での請求後、相手方が侵害行為を止めない場合、裁判所に仮処分を申し立てることで一時的な保護を求め、続いて正式な訴訟を提起します。法的に相手方の行動を制止させることを求めています。

3.審理

裁判所での審理では、提出された証拠や主張をもとに事件の詳細が検討されます。この段階で、事件の事実関係が明らかになり、法的な評価が行われます。

4.判決

審理の結果を踏まえて、裁判官が最終的な判決を下します。この判決により、相手方に違法行為を停止するよう命じられます。

5.強制執行

判決に従わない相手方に対しては、裁判所の支援を得て、強制的に違法行為を止めさせる手続きが行われます。これにより、法的な命令が実効性を持つように確保されます。

差止請求の事例

日本も含む世界各国で特許権侵害の有無を争い差止を求めた判例を紹介します。

アップル対サムスンの裁判は、世界各国で展開された大規模な特許侵害訴訟です。この訴訟は、アップルがサムスンのスマートフォンやタブレットが自社の特許や意匠を侵害していると主張して2011年に始まりました。サムスンも反訴し、世界10カ国で争われることになりました。

主な争点は、タッチパネル技術やデザインの侵害で、アップルはサムスンが自社の特許を侵害していると主張しました。訴訟の初期段階ではアップルが有利であり、オランダやドイツでサムスンの製品に対して仮差し止め命令が下されました​。

しかし、訴訟が進むにつれ、各国での判決は異なりました。英国ではサムスンが勝訴し、オーストラリアや米国では初審での仮差し止め命令が控訴審で覆されました。特に注目されたのは、米国カリフォルニア州サンノゼでの裁判で、アップルが全面的に勝訴しました。この裁判は陪審によって行われ、大きな話題となりました。

最終的には、米国の裁判でサムスンに対して1.05億ドルの損害賠償が命じられましたが、その後の控訴や再審により最終的な損害賠償額は変更され、2018年には5.39億ドルに設定されました。

この訴訟は、特許侵害に関する法律や企業間の競争の在り方に大きな影響を与えました。

差止めによる影響と問題点

現在の法制度では、特定の状況において差止請求権の行使が適切でない場合でも、法的に行使を制限する明確な規定がありません。このため、特許権を行使する際には、企業に大きな影響を与えかねない問題が生じることがあります。例えば、事業者が突然事業活動を停止させられる可能性があるため、この点について慎重な検討が求められます。

さらに、特許紛争の中でも特に問題となるのが標準必須特許の扱いやパテントトロールの扱いです。

特許法には、「標準必須特許」という特別な種類の特許があります。これは、特定の業界標準に必要不可欠な技術に対して与えられる特許です。しかし、これらの特許を持つ企業が高額なライセンス料を要求することが問題となっています。さらに、「パテントトロール」と呼ばれる企業が、製品を生産せずに特許のみを持ち、他の企業に高額なライセンス料を要求するケースもあります。

これにより、標準必須特許を持つ企業やパテントトロールが、適正な価格よりも高い料金を要求することがあり、特許システムの公平性が損なわれる恐れがあります。そのため、これらの特許に関する差止請求権の適用方法を見直し、特許権の本来の価値と社会的影響を考慮に入れた新たな規制が必要といわれています。

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特許の差止請求は自分の特許権を保護し、他者が不当に利益を享受している状況を防ぐために必須な対応です。しかし、裁判を通しての訴訟が絡んでくるなど専門家が必要になってくる手続きでもあります。そこで、特許・知財の専門家である弁理士に手軽に相談できる「チザCOM」を活用して、まずは相談してみてください。

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